宮本輝著「ここに地終わり海始まる」読了。アセクシャルが有名恋愛小説を読んでの感想。【記事後半ネタバレあり】

感想(ネタバレ、性的記述あり?)

話としては、引き込まれて展開が気になりどんどん読み進んでいったのだが・・・
最後の方の展開は、ちょっとよくわからず仕舞いだった。

6歳から18年間という、人生の大部分を結核の療養所で過ごした、社会のこと、男性との関わりなど何も知らないはずの少女が、外の世界に出たとたんに性の欲情に燃え上がること。
自分の性欲をいたずらする術も知っており、男性に抱かれたいと願う。身体のどこを触って欲しいかもわかっている。

そして、真面目、かつ人間性も申し分ない男性よりも、どこか危なっかしい、欲望に走り、嘘をつき、女を弄んでばかりの男性に惹かれていくこと…。

私にはまったくもってわからない。それって当たり前のことなのか?
病院の外の世界のことなど何も知らなくとも、本能で習得しているものなの?

これまで、比較的”普通に”30年間生きてきたはずの自分が何も知らない、わからない。全く理解できないこと。
そんなことが、とても大きなもやもやとして残り、おそらく最終章の大事な部分と思われるところあたりで、どうにもついていけなくなってしまった。

予想外に、寂しさというか、何とも言えない感情を残した本となった…。


これは全く別の視点での感想と言うことになるが、1994年の本ということで、時代背景がかなり古い。
自分もすでに生まれていた、たった30年前はこんな世界だったのかと思うと、技術進歩の具合にも割と驚かされた読書であった。

普段、恋愛小説は割と楽しむことができるし、「性描写に何とも思わない」という面はあるものの違和感を感じることは少ない。

今回は、なんだか引っかかる部分を多く感じてしまったのだが、「一昔前の価値観」みたいなものを大きく捉えてしまったせいであろうか。と思ってみたりもする。